インド映画鑑賞記録

主に南インド映画を観てる、今まさしくブログの更新方法を必死で思い出そうとしている人のブログ

Haider (2014)

言語: Hindi
監督: Vishal Bhardwaj
脚本: Basharat Peer, Vishal Bhardwaj
時間: 162 min.
出演: Shahid Kapoor, Tabu, Shraddha Kapoor, Narendra Jha, Kay Kay Menon

メモ

▼ 手段
Blu-ray (英字幕付き)​
▼ 動機
​- そもそも『Maqbool』や『Omkara』を観たのは本作のためだった事を思い出す

概要

​バルドワージ監督版シェイクスピア劇『ハムレット』。
1990年代中頃に起こったジャンムー・カシミール紛争 1 を背景としている。
医師のヒラール (ナレーンドラ・ジャー) は、負傷した分離派のリーダーを自宅に匿い治療を施していることを軍に知られ、捕らわれたまま行方不明となる。

家も爆破され、妻のガザーラー (タブー) は夫の弟である弁護士クッラム (ケイケイ・メノン) の家で過ごすようになる。
数日後、離れた都市で学生生活を送っていたヒラールらの息子、ハイダル (シャーヒド・カプール) が帰郷する。

ハイダルは母 ガザーラーと叔父 クッラムの親密な様子を不審に思い、父失踪の真相を追いはじめる。

感想

雪山に閉ざされたカシミール地方を舞台に再構築された『ハムレット』。
​バルドワージ監督によるシェイクスピアのリメイク3作は、原案である劇の本筋がどのようにインドに組み込まれるのかが気になって見始めたが、どれも見事だった。
中でも本作のアレンジは凄かった。

物語の背景にある紛争は、絶妙な加減で本筋を圧倒しないように織り込まれていたが、物語に一層深い影を落としていたように思う (一緒に観ていた者が途中で抜けて、再開時に危うく『Haider』の続きだと気づかない所だった)。
日本では今年の1月に公開された『バジュランギ おじさんと、小さな迷子』の直前でも直後でもなく、今のタイミングで観れたのは良かったかもしれない (ロケ地や土地の風習に関する知識は"バジュおじ"から得た)。

ハイダルの母、ガザーラー役のタブーは『Maqbool』にも登場した 2 が、こちらでもファム・ファタールの役割だった。周囲の運命を狂わせる程に美しい女性の役がとても合っていた。
元々少し不安定だったのか、夫があまりに理想家で仕事熱心で寂しかったのか… 美しく、依存心の塊のような母から生まれたハイダルが、どんな闇を抱えていったかを劇中のちょっとした仕草や会話から垣間見ることができた。
そんな彼らに虎視眈々と忍び寄った叔父クッラムは本当に憎々しくて最高だった。KKメノンは癖になる

心から嬉しそうなハイダルの姿が観れるのは全体を通してほんの僅かな間だけ…。シャーヒド・カプールの優しげな顔立ちや哀しげな瞳は、詩人のように繊細な心を持つハムレット 3 のイメージに重なった。 唯一、恋人のアルシヤー (シュラッダー・カプール) と共に過ごした時間は幸せそうだったけれども…

毛糸のシーンは…あのシーンは静かな狂気に満ちていて本当に好き……。

数々の印象的なダイアログや、小道具…特に頭蓋骨の使い方は原作の要素を継承しているし、夢中の描写などからも、シンボル使い方がとてもかっこいいと思った。

実際、抽象的な概念の描写があまり得意でない監督もいるので、これは物凄い美点に感じられた。

バルドワージ監督作品はまだこの三作しか観ていないが、作風が気に入ったので機会があれば今後も観ていきたいと思う。

(鑑賞日: 4/18)


  1. 参考(http://ur0.biz/6Bwc

  2. 『Maqbool』で主演を務めていたイルファン・カーンも、本作でストーリーの重要な鍵を握る存在としてカメオ出演している。

  3. すべてを見届けるハムレットの友人・ホレーシオのような存在は本作では敢えて排除されているのもポイントか。ハイダルの孤独が一層際立った。