インド映画鑑賞記録

主に南インド映画を観てる、今まさしくブログの更新方法を必死で思い出そうとしている人のブログ

Sankarabharanam (1980)

言語: テルグ語
監督:・脚本 K. Viswanath
音楽: K. V. Mahadevan
時間: 143分
出演: J.V. Somayajulu, Manju Bhargavi, Chandra Mohan, Allu Ramalingaiah

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メモ

▼ 手段
​配信(英字幕付き)
▼ 動機
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概要

娼婦の家に生まれ、古典音楽と舞踊の教育を受けた娘 トゥラシ。
彼女は好色な地主に水揚げされた晩、客を刺殺して逃走する。

トゥラシは敬愛していたカルナータカ伝統音楽の名歌手、シャンカラ・シャーストリに保護されるものの、良からぬ噂を立てられたことを苦にし、自ら村を去る。

事件により身籠っていた彼女は男児を産む。数年後、音楽の素養を身に着けた息子をシャーストリの家に送り出すのだった。

伝統音楽の衰退に伴い、シャーストリの生活は困窮していたものの、嫁入り前の娘と共に倹しく行きていた。トゥラシの息子は、シャーストリの身の回りを世話をしながら音楽の真髄を学んでいく。

苦労の末、生活を立て直したトゥラシは身分を明かさずに、そんな彼らを影から支えるのだった。

感想

師匠から弟子へ伝えられるような音楽や舞踊には、何十年…何世紀をも経るうちに途絶えてしまう様式もあるかもしれない。
それでも残そうとするのは、それらが素晴らしいから、意味のあるものだから…自分たちが生きていた証に他ならないからではないか…としみじみと考えさせられる作品だった。

本作からは「命の継承」というテーマが感じられた。

娘から母親になったトゥラシの芯の強さもポイントかもしれない。

劇中でシャーストリ (プレイバック・シンガーはS.P Balasubrahmanyam 1 ) が声楽の超絶技巧を披露する場面は、いくつもあるのだが、昼夜問わず西洋のロック音楽を演奏して騒ぎ、彼の音楽を古臭いと揶揄する若者らに、音楽の在り方について説く場面が印象に残った。
若者が「こんなのは爺さんには歌えないだろう」とギターで奏でてみせた数節を、シャーストリは完璧に歌いこなしてみせた。
一方、シャーストリが披露した複雑な表現に富んだ短いフレーズに、若者は手も足も出なかった。

音楽の神聖さには分け隔てがなく、西洋・東洋問わずどんな音楽でも敬意を払うべきだ 、と言い残し颯爽と去る姿のかっこよさ…。

また、中盤の師弟のやり取りも印象に残る。伝統歌曲を必ず決まった節とリズムで歌わなければならないのも、楽曲のテーマや歌詞のエッセンスを失わないためである事を実際に体感できる構成になっていた。
一生をかけて技術を継承する意義についても考えさせられる。

他にも、古典音階をモチーフにした曲があったり、南インドの音楽の取っ掛かりになった。

今までは胡乱な認識しかなかったものが、作品に触れた後は活き活きと目前に立ち上がってくるような感じがする。
なんとなく映画で流れていたBGMも、今は顔の見えない歌い手の存在まで感じられて、違う風に聞こえてくる。

(鑑賞日: 7/21)


  1. ディスコグラフィーが膨大な大ベテラン。ナグ様主演の『Annamayya (1997)』のヴォーカルも担当されている。 (https://www.google.com/amp/s/www.indiatvnews.com/amp/entertainment/bollywood/sankarabharanam-journey-of-s-p-balasubrahmanyam-17326.html)