インド映画鑑賞記録

主に南インド映画を観てる、今まさしくブログの更新方法を必死で思い出そうとしている人のブログ

Ankur (1974, Hindi)

言語: ヒンディー語
監督: Shyam Benegal
脚本: Shyam Benegal (Screenplay), Satyadev Dubey(Dialogue)
時間: 125分
出演: Anant Nag, Shabana Azmi, Sadhu Meher

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メモ

▼ 手段
​DVD (英字幕付き)
▼ 動機
​- アナントナーグさん主演作
- フォロワー様のオススメ

概要

​農村で貧しい生活をしていたラクシュミー(シャバーナー アーズミー)は子宝を切望していた。聴覚と発声が不自由な夫は、かつては実直な陶工だったがアルミ製の食器の流入により失職し、酒に溺れるようになってしまった。彼女はそんなに夫に代わり、領主の息子の家で下女として働いていた。

一方、都会から戻ってきたばかりの領主の息子・スーリヤ(アナント ナーグ)は、幼くして結婚した妻が成人するのを待たなければならず、農園の管理を任されながら不満を募らせていた。
彼はラクシュミーの夫に仕事を与えるが、彼が敷地内で作っているヤシ酒を盗み飲みしていた事がわかり、彼を罰する。
罰を与えられた翌日に、ラクシュミーの夫は彼女を残したまま失踪する。

兼ねてからラクシュミーの美貌に惹かれていたスーリヤは、彼女と身分違いの関係を結んでしまう。
しかし、成人した妻を自宅に迎えた頃にラクシュミーの妊娠が発覚する。

危機に直面したスーリヤとラクシュミーが取った行動とは―。

感想

スクリーンデビューしたてのアナントナーグさんの光り輝くハンサムぶりに魅入る前半だったが、物語の後半で1番輝いたのは、シャバーナー・アーズミーが演じたラクシュミーだった。 罪の意識に苛まれながらも母親となった彼女の、気丈な振る舞いからは人格の成長が伺えて、キャラクターに奥行きが感じられる。

一方、農村部の封建的な社会の中では驚くほど先進的なものの考え方をしていた若旦那様の変貌は対照的で興味深い。

都合の悪く理不尽な出来事に直面したときにこそ、人間性というものは試されるのかもしれない。

セリフが比較的少なく、静かな印象だったが、演じ手の表情やシチュエーションで心の機微を深く魅せる映画だった。

何気ないカットが何かを象徴していたり、その後の物語の展開を予感させる点も良かった。

物語は50年代のアーンドラ・プラデーシュ州で実際に起こった出来事に基づいており 1、撮影の殆どが州内で行われたという。邦題は『芽生え』。英題は『The Seeding』。

物語の随所に植物の描写があり、ラクシュミーが子宝を望んでいることや、スーリヤの腹違いの兄弟の存在も重要な伏線になっている。
終盤の村の子供の行動からも、新たな時代の芽吹きを予感させられる点が面白い。

(鑑賞日: 2/16)


  1. 杉本良男(2002)『インド映画への招待状』青弓社