インド映画鑑賞記録

主に南インド映画を観てる、今まさしくブログの更新方法を必死で思い出そうとしている人のブログ

Happy Birthday Jagapati Babu Sir!

2月12日はテルグ俳優 ジャガパティ・バーブさんのお誕生日です。 折角なので特に良かったと思う作品を上げてみます。順位は特にないけれど、なんとなく公開年順に並べてます。
※特筆のない限り、基本的にテルグ作品。ブログ記事のあるものにはリンクをつける。

目次

ハードボイルドな魅力

過去の出演作にはロマンスやラブコメも多く、若い頃のジャガパティさんからはどちらかといえば、やや軽い印象を受ける(それも素晴らしいが)。そんな中、異彩を放つ作品がいくつか存在する。様々な作品に出演した経験は再ブレイク(後述のLegend-2014を参照) 後も活きていると思われる。

● Gaayam (1993)
主演作品。ギャングのボスだった兄が元政治家に暗殺されたことを機に、抗争に身を投じ、恋人との別れを余儀なくされる青年を演じる。
1980年代に実際に起こった政治抗争が物語に織り込まれている。監督は『Siva』(1989) 、『Satya』(1998)、『Raktha Charitra』(2010) 等を手掛けたRam Gopal Varma監督。
写実的な描写や、犯罪・政治のテーマを得意とする監督だが、本作のようにロマンチックな要素のある作品からも独特の様式美が感じられる。

● Homam (2008)
主演作。マフィア組織に潜入しボスの信頼を得る捜査官・マッリを演じる。
香港映画『インファナル・アフェア』(2002)のリメイク作品。この作品で落ちた記憶がある。
本作の監督であり、悪役を務めるJ.D. Chakravarthyは、前述の『Satya』(1998) の主演俳優で、RGV監督の愛弟子に当たる人物。

● Patel S.I.R. (2017)
2014年の再ブレイク以降では珍しい主演作品。盲目の幼い孫を連れた退役軍人が、ある目的のためにギャングのメンバーを次々と手にかけていくアクション・スリラー。
老いた軍人と医師である息子の演じ分けに注目。ベテラン俳優の技量が活きるストーリー。

Honorable Mentions:
・Anukokunda Oka Roju (2005)
・Raksha (2008)
・Jai Bolo Telangana (2011)
・Thaandavam (2012, Tamil) ←ヴィクラムさん主演作。

共演者とのケミストリー

再共演して欲しい俳優さんは沢山いるけれど、この方々とは凄く共演してほしい件。幻でもいいから…

● Hanuman Junction (2001)
Arjun Sarja共演作。互いに孤児で、兄弟のように育った親友がヒロインらを巡り、複雑な四角関係に陥る物語。友情・ロマンス・アクションが詰まったお気に入りの作品の一つ。共演しているアルジュン・サルジャー氏とは長年の友人。

● Antahpuram (1998)
Soundarya主演作。ファクショニストである舅役のプラカーシュ・ラージが強烈。
ジャガパティさんはヒロインを手助けするコソ泥を好演。さらにナンディ・アワードで助演俳優賞を受賞している。Bhale Bullodu(1995)や Dongaata (1996)をはじめ、人気女優であったサウンダリヤさんとの共演は多い。再共演ができたらどんなに素晴らしかったか…。

● Pellaina Kothalo (2006)
Priyamani共演作。お見合い婚で結ばれたものの、互いに不器用で、ぶつかり合ってすれ違う夫婦を演じる。彼らが絆を結ぶプロセスが描かれたロマンス作品。苦しむ二人をやさしく取り成す祖父母夫婦、本当にGJ。
ヒロインを演じるプリヤーマニさんは各言語圏を跨いで活躍する女優だが、ジャガパティさんとの共演も多い。共演作の中では本作が一番のお気に入り。

善き父兄役として

年齢とともに主人公やヒロインの兄役から、徐々に父親役にシフトしていった。そのうちグランパ役に回るかもしれない。最高すぎる。

● Maa Nanna Chiranjeevi (2010)
主演作。ウィルスミス主演のハリウッド映画『幸せのちから』(2006)のリメイク作品。
苦境を息子に見せまいと苦労に苦労を重ね、奔走する父親を熱演。フロップ作という評価のようだが、個人的に思い入れの深い作品。

● Hitudu (2015)
主演作。元ナクサライト構成員が貧しい農村で学校を開き、才能のある少女の成長を見守り、助ける話。兄のような、父のような…慈愛に満ちた演技が素晴らしかった。こうした、心に静かに響くような映画に出演することは少ないので、とても印象に残った。

● Srimanthudu (2015)
Mahesh Babu主演。大富豪の息子として生まれたものの、稼業にも富にも関心のなかった主人公が、村開発を学ぶ女性に恋したことをきっかに村おこしをする話。主人公の父親役として出演。
『Mirchi』(2013) のKoratala Siva監督作。

● Hello (2017)
Akhil Akkineni主演作品。幼いころに引っ越したきり会えなくなってしまった初恋の女の子と、主人公の再会を描いた映画。路上で暮らしていた幼い主人公を引き取る夫妻を、ジャガパティさんとラムヤ・クリシュナンが演じている。ラムヤ姐さんもジャガパティさんの長年の友人として知られている。
監督は『Manam』(2014)、『24』(2016)、『Gang Leader』(2019)を手掛けたVikram Kumar。

Honorable Mentions:
・Lakshyam (2007)
・Winner (2017)
・Rarandoi Veduka Chudham (2017)
・Oxygen (2017)
・Sye Raa Narasimha Reddy (2019)←敢えてこちらにカテゴライズ。

名悪役の誕生

2000年代に入り、徐々に人気が低迷していったジャガパティさんを待ち受けていたのは、悪役としての再ブレイクだった。

● Legend (2014)
Nandamuri Balakrishna主演作品。
ジャガパティさんは地元の権力を握る恐ろしいドンとして主人公に敵対する、ジーテンドラ役。
銀髪に白い髭は彼のトレードマークになり、本作以降は悪役としてだけではなく、ルックスの良いシニア俳優としてオファーが増えることになる。
監督は『Sarrainodu』(2016)や『Vinaya Vidheya Rama』(2019)の Boyapati Srinu。

● Nannaku Prematho (2016)
NTR Jr. 主演作品。主人公の父親を破滅させ、復讐のターゲットとなる大企業の会長役。
物語のモチーフには「バタフライ・エフェクト」が使われ、随所にピ○ゴラスイッチ的な仕掛けが施されている佳作。ひねりのきいた展開に定評のある、Sukumar 監督の作品。

● Rangasthalam (2018)
Ram Charan主演作。物語の舞台となるランガスタラム村に君臨する冷酷な領主として出演。
ゴーダーヴァリの空気を感じさせる緩やかな口調と、村人を威圧するギラギラした目つきとのギャップで、類を見ないような存在感を放つ。 静かな恐ろしさを感じさせる悪役が一番怖い。 このカテゴリ内では一番好きな映画かもしれない。
上記のNannaku Premathoを手掛けたスクマール監督の作品。

● Viswasam (2019, Tamil)
Ajith Kumar主演作。村のドンが苦難を経て、別れた家族との再会・関係を修復する感動作。昨年は邦題『永遠の絆』として国内の映画祭でも上映された。
ファミリー映画のはずだけど、アジットさんがニコニコしながら暴れる図が妙に印象に残る。
ジャガパティさんはある目的のために主人公の娘を誘拐する大富豪の役だった。冷徹な表情の裏に秘められた心とは。

Honorable Mentions:
・Goodachari (2018)
・Aravinda Sametha Veera Raghava (2018)
・Lingaa (2014, Tamil)
・Pulimurugan (2016, Malayalam)
・Bairavaa (2017, Tamil)

コミカルな演技も実はすごくいい

アクションなどは体力的にだいぶしんどそうだけれど、ジャグさんにできない事は基本的にない。たぶん。
● Gangstars (2018)
Amazon Prime Video配信のウェブドラマ(全12話、国内は未公開)。
4人の映画関係者の男女を中心に、映画製作をめぐって物事が悪い方向に流れていく様子を軽快なタッチで描いたクライム・コメディ。
余命宣告を受け、悲嘆にくれながらも一大決心をするマフィアのボスを演じる。Navdeepが演じるお騒がせ俳優と並ぶ、キー人物の一人。
1話20分程度で手軽にみられるというメリットがある。通常の100倍の音量で「面白い!」とか叫びたい。

● Honorable Mentions:
・Subhakankshalu (1997)
・Family Circus (2001)
・Pilla Nuvvu Leni Jeevitham (2014)
・Ra Ra...Krishnayya (2014)
・Current Theega (2014)

カメオ出演でも魅せるキャラクター

面白いキャラクターを演じている/作品自体が素晴らしいと思ったもの。

● Om Namo Venkatesaya (2017)
15世紀頃にヴェーンカテーシュワラ神とサイコロ遊びをしたと伝えられる、ハーティーラーム・バーワージーの生涯を描いたデヴォーショナル映画(神への信仰をテーマとする作品)。
神に仕える女性に邪な思いを抱いた事を悔い、己に苦行を課す王として出演(私が見た幻覚かもしれない)。
贔屓にしているK. Raghavendra Rao監督作。

● Oh! Baby (2019)
Samantha Akkineni主演作品。韓国映画『怪しい彼女』(2014)のリメイク。サマンタちゃんの魅力を800%ぐらいギュウギュウに詰め込んで破裂しそうなぐらいの傑作だと思う。
昨年公開された映画の中で一番好き。ジャガパティさんも「ある役」で出演している。

Honorable Mention:
Key (2011)


ここには書ききれないほど好きな作品が沢山あるけれど、今回はいくつかのテーマに絞って書いてみました。
今後のご活躍も本当に楽しみです。 お誕生日おめでとうございます!!!

2020年1月鑑賞作品

年始恒例の自主上映ラッシュの中、観られたのはヒンディー語映画「Tanhaji: The Unsung Warrior」とカンナダ映画「Avane Srimannarayana」のみ。
神話劇も楽しく見ていたが、何をみてもナーラダ仙がおり、色々と企んでいる(大いなる計画の一環として、おそらくは全くの善意)。

テルグ作品(5)

  • Brahmalokam To Yamalokam Via Bhulokam 2010
    ラジェンドラ・プラサード主演。人に授けたはずの予知能力が別人に渡ってしまい、それを取り返すためにブラフマー神が自ら地上に赴くという、ちょっと珍しいお話。
  • Tommy 2015
    ラジェンドラ・プラサード主演のハチ公のテルグリメイク。教師を務めるおじさんに拾われたビーグル犬のトミーちゃんが本当にお利口さんで可愛かった。
  • 90ML 2019
    主演。1日3回、90mlずつ酒を飲まないと死んでしまう体に生まれてしまったイケメン、デーヴァダース(カールティケーヤ)のアクション・ラブコメディー。プラバカールさんがおいしい(?)役だった。
  • Sivakasi 2006
    アルジュン・サルジャ、ジャガパティ・バーブ共演作品。互いに敵対する組織に入ってしまった元同房者の再会と悲劇が描かれる。タミル版のタイトルは『Madrasi』。
  • Mahanandi 2005
    スマント主演。ファクション抗争を背景とするロマンス映画。一家のボスの片腕として仕えるシャンカル(スマント)が、婚約を取り付けられてしまったボスの妹(アヌシュカ・シェッティ)の駆け落ちに強引に加担させられる。スマントさんはNTR伝記映画以来、気になっていたが主演作を初めてみた。

テルグ作品 ―70年代以前(6)

  • Bhakta Prahlada 1967
    ヴィシュヌ神を敵対視するアスラの王・ヒラニヤカシプと、ヴィシュヌ神を信仰する息子プラフラーダの物語。獅子の頭を持つヴィシュヌ神の化身・ナラシンハが登場する有名なエピソードに基づく。かわいい王子を愛したくても愛せない父王の葛藤と悲哀がとても細やかに描かれており、心を打たれた。
  • Bheeshma 1966
    NTR主演。大叙事詩マハーバーラタをカウラヴァ軍総司令官・ビーシュマの視点で描いた大作。老戦士ビーシュマの誕生以前のエピソードも描かれており、若い英雄たち主軸で描かれる他の作品とはまた違った切り口で観られて面白かった。親の幸福のために彼が立ててしまった、恐るべき誓いが招いた結末とは。
  • Sri Krishna Tulabharam 1966
    NTR、アンジャリー・デーヴィ、ジャムナ共演作。クリシュナの妻の一人であるサティヤバーマの、夫の愛を独り占めしたい気持ちが騒動に発展するお話。ロマンチックだけれども、(クリシュナへの)信愛の本質に触れるような寓話的な要素もありとても興味深かった。音楽も非常に美しい。
  • Manchi Manashulu 1974
    ヒロインの父親に引き離された男女が、成長した子供の存在をきっかけに再会するお話でした。主演のショーバン・バブのシングルパパ姿は好感度高し。クライマックスでは炎の中でローラースケートで大暴れをしていた。 監督はジャガパティさんのお父上 V・B・ラジェンドラ・プラサードが務めているが、幼少のジャガパティさんが出演しているという情報があったので観た。それらしき人物が1シーンだけ登場したが、確証は得られず。

  • Chenchu Lakshmi 1958
    ANR、アンジャリー・デーヴィ共演。Bhakta Prahlada+α(ラーヤラシーマのローカル伝承とのこと)というとても興味深い構成。降臨後、荒ぶりがおさまらなくなったヴィシュヌ神の化身・ナラシンハを、妻ラクシュミーの化身である娘が鎮め2人は恋に落ちる、というロマンチックな展開だった。こちらでもヒラニヤカシプ王をSVRさんが演じておられた。ナラシンハが人と会話をするのを初めて観た。

  • Sri Krishnarjuna Yuddham 1963
    NTR、ANR共演作。マハーバーラタの英雄・アルジュナ(ANR)とクリシュナ(NTR)の友情、喧嘩そして仲直りが描かれる。実生活でも親友だったNTRとANRの親しさを伺わせる作品だった。マハーバーラタ本編にないストーリーだったのでで調べたら、舞台劇『Gayopakhyanam』を盛り込んでいた模様。

ヒンディー作品(3)

  • Tanhaji: The Unsung Warrior 2020 アジャイ・デーヴガン主演。北のムガール帝国の勢力に抵抗するマラーターの指導者・シヴァージーの片腕として戦った戦士・ターナージーの伝記的アクション映画。敵将ウダイバーン・シン・ラートールをサイーフ・アリー・カーンが演じる。奇襲攻撃を得意とするターナジーのバトルシーンは、とても見ごたえがあった。サイーフさんが演じた敵将は非常に狡猾なのに、どこかチャーミングで邪悪で最高だった。
  • War 2019
    久々のスパイ映画。ストーリーのどの部分を話してもネタバレになるんでないかと思うほど、仕掛けがいくつもあった。リティクもタイガー君のアクションシーンがとにかく舞を舞うように美しかった…ブルーレイもタイミングを見て入手したい。
  • Go Goa Gone/インド・オブ・ザ・デッド 2015
    続編が出るという知らせがあったので観た。途中までダメな若者達の青春を見守っていたのに、みるみるうちにゾンビ映画になっていった…あまりの振れ幅に、声を出して笑わずに居るのは無理だった。続編が楽しみ。

    タミル作品(3)

  • Saraswati Sabatham 1966
    インドの三女神がそれぞれ司る「知恵」「富」「力」のうち、どのパワーが最も優れているかを証明するために、各自選んだ人間に力を授けて競わせる...という、華やかかつ寓話的ないい話だった。そもそも女神たちに競争するようたきつけたのはナーラダ仙。サーヴィトリ(サラスヴァティー役)とジェミニガネーシャン(パールヴァティーに力を授けられる人間役)が出ている…。
  • 7aum Arivu 2011
    スーリヤ主演。達磨大師の時代に流行った疫病を使って中国がインドにバイオテロを仕掛ける。達磨大師の子孫に解決のカギが隠されていた。時代劇とSFを同じ映画に詰め合わせたような面白い構成だった。ストーリーだけ語ってしまうとかなりトンデモな印象になるが、とてもかっこよく撮れていて面白い。スーリヤの顔がいい。
  • Hero 2019
    ​シヴァ カールティケーヤンとアルジュン・サルジャの共演作。『Gentleman』(1993)の精神を受け継ぐ佳作。感想文が未だに書き終わらない。

カンナダ作品(3)

  • Kavaludaari 2019
    交通係の警察官(リシ)が白骨遺体事件を追ううちに繋がっていく点と点、「縁」の描写が巧妙な犯罪サスペンス作品。ダイアログも凄くいい。会話の中で日本の伝統工芸「金継ぎ」への言及があったのが印象に残る。主人公が追う事件をかつて調査した、元・ベテラン警官をアナント・ナーグが演じていたが、「警官服がなぜカーキ色なのか」という語りが深い。Kavaludaariは"交差点"と訳される。折を見てもう一度見たい。

  • Preethse 2000
    ウペンドラ、シヴァ・ラージクマール共演作。ストーカーの偏執的な愛を描いたサスペンス。ヒンディー語映画『Darr』(1993)をワケあって無許可リメイクしたものだそうだが、とても面白く見られた。ウペンドラの悲痛な演技があまりにもよくて、Darrと合わせて本作の円盤を注文してしまった。

  • Avane Srimannarayana 2019
    旅芸人の一座が盗み出して以来、失われたと思われた宝の真相を追う警官・ナーラーヤナとダコイト(盗賊団)のリーダー・ジャイラームの駆け引きと闘争が描かれる。トリックスター属性の主人公と助手のおじさんが、のらりくらりと困難を潜り抜ける様がコミカルだった。舞台の具体的な年代はぼやかされているが、レトロな雰囲気に西部劇のテイストも取り入れられており、美術がとてもおしゃれだった。アクションも満載で、昨年観たばかりの神話劇 Bhakta Prahlada(1983, Kannada)の引用があったのもワクワクするポイントだった。

その他(2)

  • Lai Bhaari 2014, Marathi
    リテーシュ・デシュムク主演のアクション映画。ひねりのきいたストーリーが面白かった。主人公がヴィッタラ(ヴィシュヌないしクリシュナが少年の姿で顕現したと伝えられる神)の申し子を自称している点にも、レンガを使った戦闘スタイルにも注目。めちゃくちゃ面白いのでお勧めしたい。

  • Kumbalangi Nights 2019, Malayalam
    4兄弟の次男・ボビーの恋を中心に話が進む、情緒と人情に溢れた作品。ボビーの恋人の義兄・シャンミーが物語にサスペンスの影を落としていた。主人公兄弟らは皆、心のどこかに寂しさを抱えているが、だからこそとても暖かい。本作のメインテーマは「兄弟愛」だと思われるが、「親に見捨てられた体験で負った心の傷の治癒」も鍵になっていた。

2019年に観たインド映画の振り返り

2020年です。あけましておめでとうございます。
今年も引き続き、楽しく元気に映画を楽しんでいきたいと思います。 よろしくお願いします。

目次

I. 良かったと思う作品
-- テルグ作品
-- ヒンディー作品
-- タミル作品
-- カンナダ・マラヤーラム作品
II. 個人的に凄く良かった15選
III. 相当癖になった5作品
IV. 集計結果
V. まとめ

I. 良かったと思う作品

My100のフォーマットでまとめた一覧 の中で◎印をつけたもの(後述の「個人的に凄く良かった15選・相当癖になった5作品」は除く)。
↑記載漏れがそこそこあった。今年度末はもう少し細かく色分け&字をきれいに書きたい…。

テルグ映画

  • Legend (2014) ←前年度のおかわり
  • NTR: Kathanayakudu (2019)
  • Oopiri (2016)
  • Fun and Frustration (2019)
  • Nannaku Prematho (2016) ←前年度のおかわり
  • Rowdy (2014)
  • Gopala Gopala (2015、テルグ語)
  • Aravinda Sametha Veera Ragava (2018) ←前年度のおかわり
  • Race Gurram (2014)
  • Sindooram (1997)
  • Nenu Nene Ramune (2018)
  • NTR: Mahanayakudu (2019)
  • Bhaagamatie (2018)
  • Hithudu (2015)
  • Hello Brother (1994)
  • Jersey (2019)
  • Devadas (2018) ←前年度のおかわり
  • Sri Manjunatha (2001)
  • Ammoru (1995)
  • Sye Raa Narasimha Reddy (2019)
  • Brochevarevarura (2019)
  • Bhookailas (1958)
  • Sankarabharanam (1980)
  • Simhasanam (1986)
  • Daana Veera Soora Karna (1976)
  • Sri Krishna Maya (1958)
  • Vipranarayana (1954)
  • Lava Kusa (1963)
  • Pandavulu Pandavulu Tummeda (2013)
  • Manmadhudu 2 (2019)
  • Jai Lava Kusa (2017)

ヒンディー作品

  • Anand (1971)
  • Kalyug (1981)
  • Company (2002)
  • Naach (2004)
  • Sarkar (2005)
  • Mangal Pandey: The Rising (2005)
  • Black (2005)
  • Rab Ne Bana Di Jodi (2008) ←前年度のおかわり
  • Rakta Charitra 1・2 (2010)
  • Rann (2010)
  • Guzaarish (2010)
  • Agneepath (2012)
  • Haider (2014)
  • A Flyying Jyatt (2016)

タミル作品

  • Gentleman (1993)
  • Iruvar (1997)
  • Mersal (2017)
  • Spyder (2017)
  • Vikram Vedha (2017)
  • Viswasam (2019)
  • Petta (2019)

カンナダ・マラヤーラム作品

II. 個人的に凄く良かった15選

公開年度順に整理。というか、どれもよくて順位がつけられない…!

III. 相当癖になった5作品

あまりにも好きすぎて連続でお代わりしたものも。

IV. 集計結果

言語 本数
Telugu 128
Hindi 42
Tamil 25
Kannada 9
Malayalam 3

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V. まとめ

好きな俳優や監督の作品もたくさん見たが、初めはコンテクスト収集のために観ていた神話・デヴォーショナル映画にも気づいたらハマっていた 。
フォロワー様方におすすめいただいた作品もみんな良かった。
自分も、好きだと思ったものは自信をもって「好きだ!」と口にしていけたらと思う。
2020年は他語圏の作品も積極的に見ていきたい。

Bhakta Prahlada (1967)

言語: テルグ語
監督: Chitrapu Narayana Rao
脚本: D. V. Narasa Raju
時間: 150 分
出演: S. V. Ranga Rao, Anjali Devi, Roja Ramani

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メモ

▼ 手段
​配信(英字幕付き)
▼ 動機
- 主演がお気に入りのSVRさん
- 王子役の子役が本当にかわいい
- ​カンナダ版がとても良くて、折角なので字幕付きのテルグ版も観ておきたかった

概要

ヴィシュヌ神の化身・ヴァラーハに兄弟を成敗されたアスラの王・ヒラニヤカシプ(S・V・ランガーラーオ)は厳しい修行の末、ブラフマー神から無敵の力を授かり、その力で天界を制す。

しかし、​息子のプラフラーダ王子(ロージャー・ラマニ)は仇敵であるヴィシュヌ神を厚く信仰していた。
どんなに厳しく叱ってもヴィシュヌ信仰をやめようとしない息子に業を煮やした王は、王妃(アンジャリー・デーヴィ)の訴えも振り切り、家来に暗殺を命じてしまう。 しかし、どんな手段を講じても、ヴィシュヌの加護で必ず生還するプラフラーダを見て、王は遂に自らの手で殺害することを決意。

ヴィシュヌ神を受け入れるよう、健気に説得を続けるプラフラーダ。
「神は汎ゆる場所に居る」と訴える息子に更に激怒した王が「この柱の中にも神はいるのか?」と問い詰めたその時、柱の中からナラシンハ神(ライオンの頭を持つヴィシュヌ神の化身)が現れる。

感想

2020年の1本目。

​昨年に見たラージクマールさんちのカンナダ版も大好きだが、こちらのテルグ版も名作と名高い。結論から言うと、素晴らしいの一言に尽きる。

息子の暗殺を命じたことにより塞ぎ込んでしまうヒラニヤカシプ王が、飲み物の中に息子の笑顔を思い浮かべてしまう場面を筆頭に、随所に織り込まれるちょっとしたカットが物語を動かす力を持っていた。演出も非常に面白い。

ラニヤカシプ王は我が子を手にかけるという重大な過ちを犯しているが、1番の過ちはそのエゴの強さではなかろうか。

プラフラーダ王子には「信仰するならヴィシュヌ神ではなく、シヴァ神にしなさい」と言いつけていたが、本心は「ヴィシュヌではなく、自分をを選べ」ではないだろうか(民には王自身の像を作って祀らせていた)。

プライドを引っ込めて過ちを認めることは、誰にとっても本当に難しい…しかし、彼のようにそのチャンスを逃し続ければ、破滅(=エゴの死)が待っているのがさだめ。

なまじ「努力して無敵の力を得た」という成功体験がある分、自分の考えに異を唱える息子を素直に受け入れるわけにはいかなかったのだろう 1

「そうか、お前はそういう考えを持ってるんだな」と言えるような父親であれば、結末は違ったかもしれない…。

題名には息子であるプラフラーダの名が使われているものの、物語の中心にはこの愛すべき哀れな父親がいる。

我が子を愛したいのに思い通りに行かず、苦悩する父王を演じるSVRさんの表情に注目。
息子への落胆、焦り、怒り、そして愛情…。葛藤の中を一瞬で駆け抜ける彼の演技から目が離せない。

ヴィランとして語られることが多いと思われる強大な王に、不思議なシンパシーと親近感を覚えた。

(鑑賞日: 2020.1.1)

関連ツイート


  1. 社会的に成功した人(自分の努力だけで成功できたと思っている手合い)を親に持つ人が苦労するケースは現代にも見受けられる。様々な観点から普遍的な何かを感じさせられる作品だった。

2019年12月鑑賞作品

2019年が始まったと思ったらもう終わってしまった。 よかった作品には をつけた。

前の年に観た Yamadonga (2007、テルグ)と Rab Ne Bana Di Jodi(2008、ヒンディー)は再び見てみると、違った観方ができたりして以前とは別の感動があった。 ​

テルグ作品

  • Yamagola 1977:NTR主演の「人間 vs 冥府の神・ヤマ」を描いた映画。殺されてあの世へ送られてしまった主人公が、その知恵やカリスマ性でヤマを出し抜く大筋は後述のYamadongaにも引き継がれている。挿入歌「Oh Lammi Tikkaregindaa」もYamadongaでパロディー化をされていた。愛を感じる。
  • Yamadonga 2007 (おかわり) :ラージャマウリ監督による人間VSヤマ映画。初見時も既に面白かったが、主演のjr.NTRの祖父であるNTRの作品や、インド神話を描いた作品を観た後で再訪問したら面白さが倍増しになっていた。時々こんな風におかわりしたい。
  • Vikramarkudu 2006:ラヴィ・テジャ主演、ラージャマウリ監督作品。警官VSファクショニスト映画。ラヴィテジャさんのトリックスター属性のキャラクターが活きた作品だった。しばらくの間「ジンダッタ」ソングの脳内リピートが止まらなくて大変だった。
  • Narasimha Naidu 2001:ナンダムーリ・バーラクリシュナ主演。幼いわが子を連れて熾烈な抗争を逃れ、古典舞踊の教師として生計を立てていた男がその過去と再び向き合う物語。ハイライトは何といってもバラクリさんのスリルあふれるダンスシーン…!アホな言動で主人公を窮地に追い込むヒロインの存在を完全スルーできれば良い映画。
  • Chintamani 1956 :デヴォーショナル映画。信仰の厚い高級娼婦をバーヌマティ、妻を持つ身でありながら彼女の魅力に捕らわれてしまう男性をNTR様が演じる。「〇〇のルールに反する」といった表面的な所で語られる"罪"ではなく、人間のウェルネスを根源から揺るがす罪がどんなものかを描いている。取り返しのつかない過ちを犯したとしても、救われる道があることも。
  • A Shyam Gopal Varma Film 2015 :気がつけば殺風景な一室で鎖に繋がれ拉致監禁されていた映画監督、その名もシャーム・ゴーパル・ヴァルマ…フロップ作品に腹を立てたファンの仕業か?駄作で金を失ったプロデューサーの仕業か?主人公は明らかに某監督をモデルにしているし、劇中も随所にネタが仕込まれており、楽しく見られた。いいエンディングだった。
  • Vipranarayana 1954 :ANR、バーヌマティ共演のデヴォーショナル映画。ヴィシュヌ神に帰依する青年を誘惑しようと目論んだ踊り子が、真の愛に目覚めるという素敵なお話だった。ロマンス映画はANR様の得意分野と思われる。何も知らない青年が女性の手に落ちていく様子は言葉では表せない…何かグッとくるものを感じた。
  • Yamudiki Mogudu: Ee Nela Thakkuvodu 2015:アッラリ・ナレーシュ主演。 天界でのミスが発端のドタバタ神話喜劇。人間vsヤマ様もの。今回も出し抜かれてしまうヤマ様はトホホな目にあっていた。奥方役のラムヤさんがかわいらしくて◎。
  • Sandade Sandadi ジャガパティさんとラジェンドラ・プラサドさん共演のコメディ。お見合い結婚に反対し恋愛婚がいいと反発する娘達に失恋を味わわせようと、富豪が3人のダメ男(妻帯者)を雇う話。調子に乗って本格的な浮気に乗り出した夫達は当然痛い目に…浮気は駄目だぜ!
  • Shanti Sandesham 2002:クリシュナさんが主演のキリスト受難劇。あっさりめのパッションだった。所々インド感はあったが、乾燥した気候のせいか下手なロケ地よりもイスラエルらしさがあった。
  • Brochevarevarura 2019 :ベストムービーオブザイヤーテルグ語部門にランクインしていた映画。ストーリーと構成で魅せる作品なので、下手にしゃべると全部ネタバレになる系の面白さ。ラフル君GJ!
  • Pandurangadu 2008 :ナンダムーリ・バーラクリシュナ主演、K ラーガヴェーンドラ・ラーオ監督。女遊びが酷く、不純な理由からクリシュナ神をフォローしていた男が、真の信仰心に目覚める過程を描いた作品。タッブーさんの悪女ぶりも素晴らしかった。後述の『Randuranga Mahatyam』と元ネタは同じだと思われるが、娯楽性も盛り込んだおいしいアレンジになっていた。音楽はおなじみのMMキーラヴァーニ先生。
  • Panduranga Mahatyam 1957:Pandurangaduが夫婦愛に焦点を当てていたのに対し、こちらは親孝行の重要性にフォーカスした作りになっていた。放蕩三昧の息子が更生するという大筋は一緒。Pandurangaとは少年の姿で顕現したクリシュナ/ヴィシュヌ神を指す。調べてみたら興味深い逸話が多い
  • Jai Lava Kusa 2017 :jr. NTRが1人三役を演じる、兄弟愛を描いたアクション映画。ラーマヤナ(ラヴァとクシャはラーマの息子たちの名前)を物語の素材として使っているのが興味深く、3人の演じ分けも印象に残る快作だった。
  • Uu Kodathara? Ulikki Padathara? 2012:マノージ・マンチュ、バラクリさん共演作。年の最後に自分はいったい何を見てしまったのか案件。ストーリーはとても良かったし、何かが決定的にアレだった。何だろう。バラクリさんを主演ではなく、物語の1要素として登場させるパターンは新鮮だった。作画(?)が非常に良かった。ソーヌーさんかっこいい。 ​

    ヒンディー作品

  • Rab Ne Bana Di Jodi 2008 (おかわり) :家族と一緒に鑑賞したところ、好評った。主人公の静かでひたむきな愛情が光る作品。折に触れて見返したい作品。 ​

    タミル作品

  • Bommalattam 2008 :手汗握るサスペンス映画。アルジュン・サルジャが演じる刑事が、天才肌のエキセントリックな映画監督(ナーナ・パテカール)を連続殺人容疑で追う。パテカール氏の底知れない何かを感じさせる気迫がすごい。
  • Iruvar 1997 :モーハンラル、プラカーシュ・ラージ共演の政治ドラマ映画(実在の人物に基づく)。売れない俳優と詩人脚本家の二人が友情を結び、互いの政界入りを境に溝を深めていく経過を緻密かつ情感深く描いた力作。新人とは思えない当時のアイシュワリヤー・ラーイにも注目。
  • Random Numbers 2017:一部でカルト的な支持を集めるショートフィルム。面白い。これからの映画の在り方について考えさせられる。ワンちゃん好きさん注意。
  • Mudhalvan 1999:アルジュン・サルジャ主演。娯楽性を贅沢に織り込みながらも「政治は誰の為にあるのか」について考えさせられる、政治腐敗 vs ジャーナリズム大作。アクションはさすがアルジュンさん!だった。彼の前に立ちはだかる悪徳政治家を演じたラグヴァランさんの演技も印象に残る。
  • Bigil 2019 :今年公開のタミル映画ではトップに入る好きな作品。元サッカー選手のギャングのボスが、女子サッカーチームのコーチとして再出発する物語だが、チームメンバーのサクセス・ストーリーとしても観られる作りだった。BigilいいよBigil。 ​

    カンナダ作品

  • Bhakta Prahlada 1983 :ラージクマール親子共演のカンナダ映画。ヴィシュヌ神を敵対視するアスラの王・ヒラニヤカシプと、ヴィシュヌ神を信仰する息子プラフラーダのお話です。クライマックスでは、プラフラーダを助けに獅子頭神ナラシンハ(ヴィシュヌの化身の一つ。)が柱をブチ割って出てくる。テルグ版Bhakta Prahladaには字幕がついていたので、そちらを先に見ればよかった。
  • Kurukshetra 2019 マハーバーラタの最終決戦を、ヒールであるドゥリヨーダナ側から描いた大作。ダルシャンSirのガッシリした体躯と豪快な笑い声がイメージ通りだった。カルナ役のアルジュン・サルジャに落ちる方が多数観測された。やった!3Dでみたいよ~!