インド映画鑑賞記録

主に南インド映画を観てる、今まさしくブログの更新方法を必死で思い出そうとしている人のブログ

2019年9月鑑賞作品

​周囲からのお勧めや、映画祭などもあり、9月は沢山の良作に出会えた。文化の秋。

テルグ作品

  • Sri Ramadasu (2003) ナグ様主演のデヴォーショナル映画。ラーマ神を熱心に信仰し、現在のテランガーナ州・バドラチャラム地方に寺院を建設した17世紀の人物の伝記作品。キーラヴァーニさんの音楽がとても良い。ラーガヴェーンドラ・ラーオ監督作。
  • Thathamma Kala (1974)
    NTR、バラクリさん、ハリクリさん親子共演作。バラクリ少年のデビュー作との事だが、可愛らしくも堂々とした演技で、ポテンシャルを秘めていたことが見て取れた。
  • Chukkallo Chandrudu (2006)
    シッダールト主演、ANR様がお祖父様役で出演。孫が3人の嫁候補から1人を選んで連れてくる話。
  • Daana Veera Soora Karna (1977)
    NTR主演、マハーバーラタのカルナを主人公に描いた、壮大スペクタクル作品。またもやバラクリさん(アビマニュ役)の光り輝く美少年ぶりに驚く。
  • Srimannarayana (2012)
    ジャーナリストが悪に天誅を下す作品。ジャーナリズムではなく、主に力で…w。美少年のバラクリさんをみた後で、無性におじさんになったバラクリさんを観たくなった。安定のバラクリさんで安心した。
  • Orange (2012)
    ラーム・チャラン君主演。周りからの評価があまりにもアレだったので、気になって観た。途中で凄絶に横道に逸れすぎるせいでアレかもしれないが、疑り深さを拗らせた青年が真実の愛に気づくという、物語としてはかなりイイ話に入る部類かもしれない。ナガバブさんが超カッコいい。
  • Devadasu (1953)
    ベンガル語の悲恋小説が原作のANR・サーヴィトリ主演作品。失意の中で酒に溺れていくデーヴァダースと、現実を受け入れる事に決めたパールヴァティの表情の違いが対照的で、印象に残る。
  • Pandavulu Pandavulu Tummeda (2013)
    モハン・バーブ、ヴィシュヌ・マンチュ、マンチュ・マノージの親子共演作品。親の決めた縁談で無理やり故郷に連れ戻された長男の彼女を奪還するため、一家全員で計画を遂行する痛快コメディーだった。随所にマハーバーラタへのオマージュがある。多分、今月見た映画の中で1番笑った。マノージ君の○○にグッと来た。
  • C/o Kancharapalem (2018)
    大変な話題作だったので、観てみたら素晴らしかった件(⇒感想)。是非とも映画祭等で上映して頂きたい作品。
  • Awe (2019)
    「ナーニ君が金魚でラヴィテジャさんが盆栽役」という字面の強さでずっと気になっていたが、漸く観られた。テルグ版「世にも奇妙な物語」のような感じで楽しかった。驚きのエンディングは観てからのお楽しみ。

ヒンディー作品

  • Manikarnika: The Queen of Jhansi (2019)
    ラクシュミ・バーイー伝記作品。観た直後に日本公開が決まり嬉しい。次回観るときは、どこまでをクリシュ監督が撮っているのか注視してみたい(NTR伝の撮影のため、途中からカンガナー女史に交代していたらしい)。
  • Gully Boy (2019)
    ランヴィール・シン主演。 ストリート・ラッパーのサクセスストーリー。 日本公開が決まって嬉しい。リリックが日本語字幕でどういった表現になるのか楽しみ。
  • A Flyying Jyatt (2016)
    IMW上映。笑いは勿論の事、しんみりする所もある、胸熱アクションコメディー映画だった。タイガー・シュロフ君イイ…!ヒーローが信じるものに、心の琴線に触れる何かがあった。zee5での配信には字幕が付いていないので、日本語で見られてとてもラッキーだった。

  • Mangal Pandey: The Rising (2005)
    セポイの反乱を元にした、アーミル・カーン主演作品。上記ラクシュミ・バーイー伝にマンガル・パンデーに関する言及があったので観てみたが、ディテールが細部まで行き届いており、インド独立運動の背景にあるもののイメージが掴めてきた。

タミル作品

  • Vikram Vedha (2017)
    屍鬼二十五話』をコンセプトとした、刑事とギャングの追いつ追われつサスペンス。己の正義を信じ、任務遂行に手段を選ばぬ刑事 (マーダヴァン) を、のらりくらりと搦め手で躱すギャングのボス (ヴィジャイ・セードゥパティ) の人間描写、衝撃のストーリー展開に心を鷲掴みにされた。
  • New (2004)
    SJスーリヤ主演・脚本・監督作品。8歳の子供がある日突然大人になってしまったら…ハリウッド作品『Big』に着想を得ているとのこと。マヘーシュ王子主演でテルグ語にリメイク(『Naani』2004年)されているそうだが、気になって仕方がない。
  • Jigarthanda (2014)
    映画監督志望者がバイオレンス映画の製作にあたり、取材のため実際のギャングボスに密かに接近するが露見してピンチ。ボビー・シムハの悪っっそうな表情が良い。最後まで展開が読めず、目が離せなかった。最近、ヴァルン・テージ主演でテルグ語でリメイクされた(『Gaddala Konda Ganesh』)ので、機会があればそちらも観たい。 ​

    その他

  • Transformers: Dark of the Moon
  • Transformers: Age of Extinction
  • 大巨獣ガッパ

C/o Kancharapalem (2018)

言語: テルグ語
監督・脚本: Maha Venkatesh
時間: 152分
出演: Subba Rao, Radha Bessy, Kesava Karri, Nithyasri Goru, Karthik Rathnam, Praneetha Patnaik, Mohan Bhagath, Praveena Paruchur

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メモ

▼ 手段
​配信
▼ 動機
- ラナさんがプレゼンターをやっていた
​- とにかくめちゃくちゃ好評だった
- ジャガパティさんも大絶賛
- とにかく各方面からプッシュされた

概要

クラスメイトに初恋中の男の子。

同僚である​未亡人女性に仄かな恋心を寄せる、独身の中年男。

毎日決まった時間になると頭巾で顔を隠して酒を買いにやってくる女性に、片想いをする酒屋の青年。

家柄の良い女子学生と恋仲になったことをきっかけに、真っ当な道を目指す元チンピラ。

そして横柄な雇い主から独立して、自分の腕1本で身を立てる決意をしたハリボテ職人。

雑踏の中でひしめき合うように生きる彼らの、それぞれの恋愛、家族愛…喜びや哀しみを描いた群像劇。

感想

上手く説明できないが、これは「なんとかして、日本でももっと沢山の人に観て貰えるようにしてほしい」に尽きる。

​加入していないサービスでの配信だったので後回しにしていたが、ネトフリに入った機会に観てみたら本当に良かった。

物語の舞台はAP州北部、ヴィシャーカパトナムにあるカンチャラーパレムという地域だそうだが、様々な年齢・バックグラウンドを持つ登場人物達が恋をし、苦悩し、懸命に生きる様子がリアリティーと誠実さを持って描かれていた。

洞察に満ちた人物描写が素晴らしい。
実在する人物ではないか?と思うほどに、それぞれ説得力のある物語とキャラクターがあった。

また、特定のコミュニティに属する人々や性的マイノリティが世間から受ける差別を伺わせる描写が、ストーリーに織り込まれており、通常はスクリーンから遠ざけられているであろう過酷な問題についても目を向けさせられる。

こんなに緻密に描きこまれた人物が何人もいて、果たして動かしきれるのかと思ったら、随所にさり気なく敷かれた伏線を回収しながら綺麗にまとめた。

本作を "A big, small budget film" と称する記事やツイートを何度か見かけたが、この「大きくて小さい」感じは…実際に観てみて納得した。

どんなに誠実に生きようと、人生は優しくなくて、時には裏切られたように感じることがある。
どう考えても死ぬまでに帳尻が合うようには思えないことも 。

それでも善く生きて、いつか「生きるのをやめないで良かったな」と思える日がやってくるのを待ってみる意義について、作品鑑賞後もしみじみと考えさせられた。

内省的だが無口すぎず。語りすぎず、語るべきときに語る…こんな作品に人格があったなら、良い友人になれたかもしれない…そんな空想めいた事を考えてしまった。

同日内に『Awe!』(2018) を観たが、こちらも低予算で作る映画の面白さが体感できて良かった。

(鑑賞日: 9/29)

関連ツイート

2019年8月鑑賞作品

ブログを書く気力は少しずつ回復してきているが、相変わらずサボりぎみなので
簡単な感想をこちらに残しておく。

テルグ作品

  • Devadas(おかわり):
    Zee5で配信されていた、ナグ様とナーニ君主演映に漸く字幕がついたのでお代わり。
  • Sri Manjunatha:
    アルジュン・サルジャさんがシヴァ・リンガパークを建設するデヴォーショナル映画。チル様がシヴァ神
  • Bharat Ane Nenu:
    マヘーシュ・バブがCM(州首相)に就任する政治アクションヒーロー映画。
  • Chi La Sow:
    スシャントさん主演の、カップルのお見合い初日を描いた映画。キショールさんにMVP賞をあげたい。
  • Anukokunda Oka Roju:
    女子学生の空白の1日を追うサスペンス映画。JBさんがその捜査にあたる刑事役で出てくる。
  • Adithya 369:
    ラクリさんがタイムマシン(UFO)に乗って過去・未来に行く映画。ヤバかった。
  • Jagadguru Adi Shankara:
    宗派同士の争いを鎮めた聖人を描いた、超豪華俳優陣で送るデヴォーショナル映画。ナグ様とチルさまが凄い共演の仕方をした。
  • Simhasanam:
    マヘーシュ王子のお父様である、クリシュナさん主演の超大作時代劇。キンキラでド派手で楽しかった。
  • Bhairava Dweepam:
    ラクリさんの歴史ファンタジーアクション映画。色んな意味で最高に楽しい映画なので誰かに見てほしい。

タミル作品

  • Isai:
    SJスーリヤ主演・監督・作曲のサスペンス映画。めっちゃ好き放題やってて最高だったけど終わりだけなんとかしてほしかった。
  • Iraivi:
    ヴィジャイ・セードゥパティ、SJスーリヤ、ボビー・シンハーがダメダメトリオを演じる群像劇。ちょっと好きなタイプの悲劇だった。
  • Irumbu Thirai:
    ヴィシャール主演のサイバー犯罪アクション映画。アルジュン・サルジャさんが悪役だった。

ヒンディ作品

  • Sanju:
    サンジャイ・ダットの半生を題材にした映画。ジャーナリズムの在り方について考えさせられる。久々に日本語字幕で見られてよかった。

その他

Simhasanam (1986)

言語: テルグ語
監督: Krishna Ghattamaneni
脚本: Krishna, Tripuraneni Maharadhi
時間: 155分
出演: Krishna, Jaya Prada, Radha, Mandakini, Amjad Khan

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メモ

▼ 手段
Youtube 配信(英字幕付き)
▼ 動機
​マヘーシュ王子のお父様であるクリシュナさんの映画を何かしら見ておきたかった

概要

​ダシャルナ王国の王女、アラクナンダ・デーヴィは将軍、ヴィクラマ・シンハ (クリシュナ) に恋をしていた。
しかし王座を狙っていた国の大臣は、計画の邪魔になるヴィクラマに王女暗殺未遂の濡れ衣を着せ、国外追放してしまう。

一方、隣国のアヴァンティ王国の王妃は息子であるアーディティヤ・ヴァルダナ王子 (クリシュナ: 一人二役) をダシャルナ王国の王女と結婚させようと考えていた。
しかし、アーディティヤ王子は宮殿に仕える踊り子に夢中。
ある日、森に狩りに出掛けた自由奔放な王子はそこで静かに暮らす美しい娘・チャンダナと恋に落ちる。

チャンダナは育ての親に与えられた食事により、触れたり口づけた相手を殺してしまう毒を持っていた。全てはある目的のため…。

彼女は自分の体質について知らされずに育ったが、あることをきっかけにそれを知る。
苦悩するチャンダナは愛するアーディティヤを傷ける前に、と河へ身投げしてしまう。
彼女を助けたのは、アーディティヤ王子と全く同じ顔をもつ、流浪の身となったヴィクラマ・シンハだった。

アーディティヤ王子はチャンダナを救助したヴィクラマに、ある取引を持ちかける。

感想

まず、クリシュナ様の顔が良い。
次に、クリシュナ様の顔が良い。

あの手この手を使い、贅を尽くし、鮮やかに彩った王道ド真ん中の豪華絢爛・冒険アクション・ロマンス時代劇だった。

​ああああーーー困りますおやめくださいクリシュナ様ーーー(まさかのダブルクリシュナ様)!! 案件 1

本作は主演のクリシュナさん自身が監督・プロデュースを手がけているようだが、もう本当にこれでもかというほど観客 (という名の乙女たち) のハートに掴みかかっている。

クリシュナさんは絵本の中から抜け出てきたような王子様みたいだ…としか言いようが無い。
ヴィクラマに恋する王女様の気持ちが分かりすぎて困る

「貴方は硬派なヴィクラマがお好き?それともナンパなアーディティヤ王子?」

…と終始問いかけられているような。

なんだか色々受け止めきれなさ過ぎて、 当時の彼にガチ恋してた娘さん達の黄色い声援の幻聴が聴こえてくる。

マヘーシュのお父様として、初めて画像でお見かけしたときに「あー似てるなー」で済ませていた過去の自分を殴りたい。 「動いている所を観ろ」と。

ラモジフィルムシティーに行ったことのある人は楽しいだろうなぁと思うシーンが沢山あった。

本作はテルグ映画史上初の70mmフィルムのステレオ音声映画だった模様。

大きな予算をかけた作品は従来のスタイルを踏襲しつつも、必ず何かしらの形で革新的な技術を取り入れているので、何かないかチェックしてみると面白い。

インド映画に限らず、映像技術はここ20年間…その前の2、30年間とは比べ物にならないほどに目まぐるしい進歩を遂げている。
だが時折こうして旧作に触れてみると自分たちは目ではなく、本来は想像力を使って映像を観ていたことを思い出させられる。

今年の日本在住テルグ人コミュニティーのウガディ(AP州の正月祝祭)でも劇中歌「Akasamlo Oka Tara」のパフォーマンスがあったぐらいなので、誰でも知っているような作品である模様。

ちなみに劇中歌全曲が素晴らしい。

(鑑賞日: 8/22)

関連ツイート


  1. ラブソングはなんだか恥ずかしくなって指の隙間から鑑賞。南インド基準のお色気シーン最高ですね。でもチャンダナと出会う前にラブラブだった宮殿の踊り子さんがちょっと可哀想。

Chi La Sow (2018)

言語: テルグ語
監督・脚本: Rahul Ravindran
時間: 155分
出演: Sushanth, Ruhani Sharma, Vennela Kishore, Rohini

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メモ

▼ 手段
​配信(英字幕付き)
▼ 動機
​話題作であったため
(SIIMAノミネート作品)

概要

​失恋を乗り越えてから6年。
25歳を迎え、結婚適齢期に入った青年・アルジュン (スシャント) は自由を謳歌したいがために、親が持ってくる縁談を断り続けていた。
そんなアルジュンにはお構いなしに、両親はある取り計らいをする。
それは両家が揃ってお見合いに立ち会う通常のセッティングではなく、花嫁候補・アンジャリを自宅に招き、アルジュンと二人きりで話す機会を設けるというものだった。

全く乗り気でなかったアルジュンは、断るつもりでアンジャリに会う。
アルジュンが結婚に乗り気でない事を知ったアンジャリは落胆するも「縁談を断られる事にはなれている。気にしなくて良い」と語る。

暫く話を聞いているうちに、美しく聡明で自立した彼女に惹かれるものの、アルジュンは出会ったその日に結婚を決める事に躊躇いがあった。
悩んだ末に彼女に交際を申し込むが…。

感想

ヒロインのアンジャリが同年代の人間以上に自立している一方で、主人公のアルジュンは年齢相応の若者 (甘やかされ気味) という印象。

彼を演じたスシャントさんのちょっと頼りないけど優しいスマイルが、キャラクターによく合っていた。

ハッピーエンドであることは予想できたが、全く性格の違う初対面の二人が絆を結ぶに至るプロセスが、数時間のうちにで起こる様々なハプニングと共に描かれている。

書き出してみると、どうということもないストーリーだが、登場人物たちのダイアログに考えさせられるものがあったり、ちょいちょい引っ張り出されては憂き目に遭うキショールさん、我らのラフール君 (ラフール・ラーマクリシュナ) [^1] のコミックシーンが絶妙なタイミングで入り、メリハリのついた構成だった。

ロヒニさんが演じるアンジャリの母親が、病のために娘の苦になっているのではないかと悩む姿にはシンパシーを覚える。
結婚を家同士のものと捉え、本人に非が無くても相手の家庭が問題を抱えていれば本音と建前を使い分けて忌避する風潮は、日本にも根強く残っているように思う(問題を抱えていない家庭など無いと思うのだが)。

そんな中でアンジャリの自立したものの考え方や、彼女を受け止めようとするアルジュンの在り方には希望を感じさせられる。

自分の元同僚に、インドに一時帰国した際に突然結婚が決まってしまった人が居たのを思い出した。

「一回のお見合いでお互いに一目惚れで結婚し、その後も末永く暮らしました、めでたしめでたし」となれば苦労はないのだが、
本作の二人のように互いををよく知った上で、時間をかけて愛情を育てていきたいと思う人も多いのではないかと思う。

映画の中でお見合いシーンが描かれることは多いが、お見合い前後の数時間のみに焦点を当てた映画は初めて見たかもしれない。面白かった。

(鑑賞日: 8/21)

[^1]​: キショールさんもラフール君も主人公の良き友人役として馴染み深い。二人が良い働きをしている映画は良作であることが多いような気がしている。